うっかりアイドル♡シドーちゃん




「いっけなーい! 遅刻遅刻ぅ~」



  私は食べかけのエビルバイブルを咥えながら、家を勢いよく飛び出した。後ろから「お行儀悪いわよー!」ってママの声が飛んでくるけど、そんなの気にしてる場合じゃないの。もう、ママったら! 私、スライム離乳食を食べてるコドモじゃないのよ!



 ……あっうっかりしちゃったわ。

 初めまして皆さん、私はシドー! 今絶賛思春期満喫中の、破壊神(アイドル)の卵なの!



 あら? 今アナタ、「女の子が破壊神(アイドル)?」って思ったでしょ? ダメよーダメダメ、そういう偏見は。その手足、爪楊枝にしちゃうわよ!

 私達魔族に、男も女も関係ないわ。求められるのは強さ! 強い人がモテるのよ! そして破壊神(アイドル)は、皆の憧れの的、その最高位破壊神(トップアイドル)になることが私の夢なの!

 だから私も毎日、強さを磨いてるんだけど……はあ、まだダメダメ。私ってば生まれつきか弱いから体力は少ないし、それをフォローするために回復呪文はちょっと頑張って覚えたけど、頭悪いから攻撃呪文が覚えられないの。あと攻撃も、ちょっとあっつい炎を吐くことと、相手をうっとり夢見ごこちにする攻撃しかできなくて……。頑張って死者数(ライブ)を稼いで破壊神(アイドル)デビューしたのはいいんだけど、これじゃあまだまだ先が思いやられるわ……。

 ハッ、私ったらうっかり朝からブルーになっちゃった! ダメよ、これからまたお仕事なのに! 前向きシドー、スイッチオン!



 今日は、最近熱心なファンをやってくれてるハーゴン君に、お仕事を依頼されちゃったの。ああ、今から楽しみだわ。毎日祈祷(ファンレター)を送ってくれるハーゴン君だもの、きっと素敵な世界(舞台)を用意してくれてるに違いないわ!

 魔界の空は、いつもの綺麗な虹色。私は毎日仕事前に虹の中をすいすい泳ぎながら、出くわした魔物達をモグムシャして通勤するのが好きなの。気分が最高に「ハイ」ってやつになれるからね!



「縺ゅ▲繧キ繝峨・讒假シ√€€遘√r逕溯エ・↓縺励∪縺吶€√←縺・°螂エ繧峨r」



 あっ、ハーゴン君! 雲の曲がり角から飛び出して何か叫ぶ彼と、ドッシーン! 激突! その拍子にゴックン! ついハーゴン君を食べちゃったわ!



 もう、私ったらうっかりさん! お仕事内容を、聞く前に食べちゃった。まあいいわ。私、彼らの言葉って分からないし。やることはいつも一緒だもの。



 すると、みるみるうちに私の目の前がテレテレテレーン。七色の渦に巻き込まれて、気付いたらせっまーい岩の中!

 もうどこよここ、よくわかんないわ! 変なチミっこいのが三人いるし! さっそくシドー大ピンチ!

 ……でもやるしかないわ。破壊神(アイドル)のトップを駆け上がるために!



 私の炎で、みんな燃えなさい!


















※第16回ワンライ参加。
 お題「シドー」選択。








20141019